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デッキを配し、やさしい表情の南側外観 | 木組みが美しい北側外観 |
取材地は、天竜市から春野町(伊藤晋一郎 町長)を経由し、中川根町に抜ける国道362号沿いの宮川地区。周辺を美林に囲まれた山間地に、今回の取材先である平木団地が建設されました。
施設は、北側に気田川の清流、ゆったりとした敷地の南側にはファミリー広場を配し、「過疎化の進む同町の若者定着化施策の一環」(同町建設課)にふさわしいゆとりの設計・施工となりました。
当初、RC造3階建てだった基本計画は地域産業振興上の配慮から、前町長の強い意向で木造へと計画変更されました。
このため「地元の木材、地元大工さんの技能で対応できることが町側から強く求められ、結果的に杉、桧等春野産材の有効活用と木造軸組在来工法の採用が必須条件」(設計事務所)となりました。
施設の概要は別表のとおりですが、施工者が「延べ800人工を越すと思う」というだけに、随所に見どころがあります。
まず目に付くのが外観。広場を見渡せる南側にはウッドデッキ、バルコニーを配し、開放感あふれるデザインとなりました。階段室と外廊下の柱、梁、手摺り等は力強い木組で表現され、単調な北側外観に美しいアクセントを与えています。
建物内部でまず目を引くのが25mm厚の杉小幅床材です。心材と辺材が混在し、節ありの床仕上げは実に大胆で素敵です。また、各室の中央部には尺角近い(28.5cm角)杉柱が使用され重圧感もたっぷりで、ついつい賃貸共同住宅であることを忘れそうです。
前述のような健康配慮の木質仕上げのほかに、裸火を使わないオール電化をはじめ、一部の居室では現下の建築課題であるフラットフロアー等ユニバーサルデザインも取り入れられ、安心とやさしさ満載の仕様となっています。
剛健さと繊細さを合わせ持つこの住宅が、春野町の若人定住の切り札として有効に活用されることが期待されます。
所在地 | 周智郡春野町宮川289-1 |
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規模・構造 | 軸組木造3階建共同住宅(準耐火構造) |
建築(延床)面積 |
576.67(1,129.52)㎡ 1階/463.82㎡ 2階/358.77㎡ 3階/306.93㎡ ・ファミリー向けの2LDK/6戸 ・独身者用の1DK/10戸 |
総工費 | 353,000千円 |
設計・監理 | (株)賛同人建築研究所 (浜松市) |
施工 |
中村建設(株)(浜松市) (株)松下建設・(有)モリシタ特定建設工事共同企業体(春野町) |